近年では、スマホアプリを利用して発行・管理を行うブランドプリペイドカードが増えて来ましたね。カード払いが手軽に利用出来るようになる上にポイント二重取り等も出来るため、様々な方から人気のサービスとなっています。
サービスによっては「後払い」と称するキャッシングサービスを提供していることもあるのですが、こちらはユーザーが大きく損をしてしまうので使ってはいけません。一見便利そうですが実際はかなり危険なサービスなので、ブランドプリペイドカードを利用する際は注意しましょう。
今回は、ブランドプリペイドカードのキャッシングサービス「CNPL」について説明します。
はじめに
近年ではコード決済サービスを中心に「BNPL」(Buy Now Pay Later)と呼ばれるサービスが広がっており、審査が不要又はかなり簡単に済ませた上で後払い決済が可能となっています。あまり高額な支払いには使えませんが、余程のことが無ければ誰でも使えるということで評価されていますね。
通常の後払いサービスでは割賦販売法が適用されるため、提供するには経済産業省への登録や信用情報機関への登録が必要です。ですが、返済が2か月以内に行われるサービスであれば割賦販売法の対象外となるため、BNPLは簡単に利用出来るようになっているわけですね。
サービスによっては翌月末までに返済すれば費用が発生しないこともあるので、
適切に管理出来る方であれば使っても良いかもしれませんね。
その一方で、BNPLでの審査が甘いことが原因となり、返済能力が無いにも関わらず借入をするユーザーも多く存在する様子です。通常のキャッシングサービスと同様に利息をかけているサービスも多く、これらのサービスによって破産状態に陥る方が増えており社会問題化しています。
日本においては自己責任論が依然として強く唱えられており、生活が困窮しているにも関わらず社会福祉が受けられない方も多いようです。そのような方がBNPLに頼ってしまうとしても不思議ではないので、当事者のモラルを追求しても問題の解決にはならないでしょうね。
CNPLの概要
CNPL(Charge Now Pay Later/チャージ型後払い)は前述のBNPLを発展させたサービスであり、近年一部のブランドプリペイドカードで提供されるようになりました。利用すると支払いのみに利用可能な残高がチャージされ、返済は翌月末までに行わなければなりません。
CNPLではチャージする金額を「商品」として見立て、それを販売しているだけという建前で提供しているようです。これによってCNPLは貸金業法の規制を逃れているのですが、そのためか多くのサービスは提供条件に問題を抱えています。
これらのサービスは名称に「後払い」と付けていることが多いですが、
形式としてはキャッシングサービスにしか見えませんよね。
CNPLでは年利による利息ではなく金額に応じた手数料が要求されるのですが、大抵のサービスでは借入金額に対して手数料が高めに設定されています。これを利息制限法上の「みなし利息」と捉えた場合、同法における利息の規制を大幅に超過してしまうため注意が必要です。
利息制限法(昭和29年5月15日法100、平成11年法155、平成18年法115)
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
[中略]
第三条 前二条の規定の適用については、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りではない。
[後略]
利息制限法の規定より引用
利息制限法第三条における「契約の締結及び弁済の費用」とは、書留の送料やATM手数料等を指します。CNPLで請求される手数料はこれらの費用ではなく、みなし利息として判断することが出来ますね。
例えば、バンドルカードというサービスの「ポチっとチャージ」では3,000円の借入に対して510円の手数料が発生しますが、これでは最も長い期間で借入したとしても年利102%分に相当してしまいます。利息制限法の規制では10万円未満でも年利20%までとされているため、CNPLがいかに危険かということが分かりますね。
このようなCNPLですが、最近ではKyash(イマすぐ入金)やB/43(あとばらいチャージ)等他のブランドプリペイドカードにも広がりを見せています。もしこれらのサービスを利用する場合は、CNPLを回避するようにしてくださいね。
利息についての考察
CNPLの見なし利息について考えるために、
利息自体の性質について調べてみましょう。
借金や後払い等の契約において、債務者は期限前にいつでも弁済をすることも可能です。その一方で、民法の規定では期限前弁済によって発生した損害について賠償請求が出来るとされているのですが、これに「期限までに発生し得た利息等」が該当するか否かが問題となります。
民法(明治29年4月27日法89)
[前略]
第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
[中略]
第五百九十一条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
[後略]
民法の規定より引用
債権者側にとっては期限前弁済が行われることで貸し倒れ等のリスクが消滅する他、早期に返済された金銭を用いて利益を得ることも可能です。そのため、債務者が期限前弁済を行ったからといって、直ちに本来の期限で発生した分の利息を支払う必要が生じるわけではありません。
特に貸金業者の場合は返済金を簡単に転用可能であると考えられるため、参議院の附帯決議によって民法591条3項の規定は限定的にしか適用されないこととされ、それを回避する旨の特約については効力に疑義が生じるそうです。これを簡単に解釈すると、「法律上、貸金業者からの借金による利息は日割り計算で算定することになっている」と言えそうですね。
債権者側が本来の期限で発生し得た利息分を請求する場合、
それが上記規定における損害に当たることを立証しなければなりません。
CNPLでは期限前の返済が可能となっているサービスも多いですが、その場合の利息は最大でも年利20%で日割り計算しなければならないはずです。ですが、CNPLでは手数料として一括で請求しているため、それを加味するとかなりの暴利でキャッシングを提供していることになりますね。
もしCNPLを利用してしまったら
CNPLは簡単に利用出来ますが結局は借金であり、もし利用してしまった場合は速やかに借入金を返済しなければなりません。大抵は借入日の翌月末が返済期限として設定されていますが、もし返済が遅れてしまうと最悪の場合は借金取りが取り立てに来ますよ。
CNPLの手数料と利息制限法の規定を照らし合わせた際、みなし利息として超過している分は返還される可能性が残っています。みなし利息の超過分がどうしても気になる場合は、利息制限法の規定及び民法703条(不当利得の返還)に基いて返還請求を行うことも1つの手です。
これが所謂「過払い金請求」というものであり、
借入の利息で困った際は頼りになる手段ですね。
CNPLの過払い金を知りたい場合は、借入と返済の記録から以下の計算によって求めることが可能です。
過払い金=手数料-(借入額×0.2×借入日数÷365)
借入毎に個別で計算した結果出てきた数字が正の数であった場合、その小数点以下切り上げ分が過払い金です。弁護士を頼る等請求方法はお好きに選んでも良いですが、もし手数料負担の重さに悩まれている方はご一考ください。
尤も、CNPLによる過払い金は金額自体を見れば少額なので、過払い金請求を行っても費用の方が上回ってしまいそうです。これが問題解決を困難にしている原因でもあるので、CNPLについては法律による早期の規制が必要と言えますね。
まとめ
最初はバンドルカードだけの問題点であったCNPLでしたが、最近になってKyashにまで広がったことがあまりに衝撃的だったためにこの記事を作成しました。
CNPLはどのサービスでも暴利で提供されており、絶対に利用してはいけません。このようなキャッシングサービスが広がることなく、キャッシュレス決済が健全な経済活動に貢献して行くことを願います。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
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