前澤裕作はファッション系ECサイト「ZOZOTOWN」等で知られている他、一部界隈では金をばらまく成金としてある意味有名な人物です。最近では株式会社カブ&ピースという会社を新設しており、2024年11月から「KABU&」(カブアンド)というサービスをスタートしています。
ですが、カブアンドに関しては正直なところ不安な部分も多いため、懐疑的に見ている方も多いようです。また、当記事の筆者としては本件に関連してどうしても思い出してしまうことがあるので、今回はそちらについて見て行きましょう。
KABU&(カブアンド)とは
カブアンドは主にインフラ関係のサービスを提供する事業であり、現在では電力・ガス・通信回線・ふるさと納税・ウォーターサーバーといったものが用意されています。カブアンドのサービス料金は特段優れているわけではありませんが、最大の特徴は料金に対して適用される還元サービスです。
カブアンドの各種サービスを契約すると、その利用料金に対して一定割合分の「株引換券」が付与されます。株引換券は1枚=1円分のレートと設定されており、運営元株式との交換に利用可能となっているようです。
株式は会社の経営状況や社会情勢といった様々な要因によって価値が変動し、その結果によっては大きな利益を得ることも出来ます。普通にポイントを還元するよりもお得、ということで運営者はこれを宣伝材料としているようですね。
カブアンドの特徴はその名の通り株式なのですが、
最大の懸念点はこの株式そのものとなっています。
カブアンド運営元は現状で上場していないため、配布によって手に入る株式は全て未公開株となります。この株式には規約によって譲渡制限が設定されている上に、議決権はおろか配当権すら無い様子です。
また、カブアンドではサービスの性質上無制限に株式を発行し続ける必要があるため、そのままのサービスを続けると必ず1株当たりの価値が下がることになります。これを回避するにはネズミ算的に契約者が増加する必要がありますが、それはあまり現実的ではないでしょうね。
そのため、この株式はただ持っているだけでは何の意味もないパラメータと化し、運営元が上場しない限り売却出来ず、将来的に必ず価値が下がってしまうということです。これを運営元が様々な方便で言い繕っているのですから、世間で不審に思われても仕方が無いというものです。
ちなみに、一応ですが株引換券は各種料金へ充当出来る「割引券」として変換することも出来る様子です。尤も、そうであれば最初からそこそこ料金が安くてポイントが貰えるサービスを利用した方がお得でしょうね。
過去に類似サービスで失敗例がある
カブアンドは還元対象である株式が実際に売却出来るか否かが運営次第であり、その不安定さが世間での大きな懸念点となっています。実は、過去には同じような商品が還元対象とされた後、それが表に出ること無く立ち消えとなったサービスが存在していました。
そのサービスは「ビットマイル」と呼ばれる予定だった暗号資産で、ポイントサイト「すぐたま」及びポイント交換サイト「ネットマイル」を運営する株式会社ネットマイルが計画していました。こちらは日本特有の共通ポイントサービスを強化・発展させたサービスを目指し、活動によっては個人も発行主体となれることが特徴とされていたようです。
日頃からポイントサイトをよく利用している方であれば、
その名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
2018年当時のビットマイルは同社が運営するポイントサイト「すぐたま」でキャンペーンを打ち出しており、還元されたポイントと同額のビットマイルトークンをすぐたまアカウントにプレゼントしていました。もし上場出来た暁にはこちらが売却出来るようになるため、2重にお得になるかもしれない……ということで参加者を集めていたようですね。
しかし、2019年からすぐたま及びネットマイルで経営判断のミスが立て続けに発生し、当時の年末から年明け頃には取り付け騒ぎまで発生する事態となりました。この事件の詳細については以下の記事でもまとめているので、興味があればそちらもチェックしてみてくださいね。
この騒動によってすぐたま及びネットマイルは急激なユーザー離れを引き起こし、サービスの縮小を余儀なくされて行きました。それによってビットマイルの話もいつの間にか有耶無耶になってしまい、現在では公式サイトすら消滅してしまいましたね。
その後ネットマイルは株式会社ウィルズの完全子会社となり、
ポイントサイト事業については辛うじて継続出来たようです。
カブアンド運営がいつまでも上場しない可能性を杞憂だと思っている方もいるかもしれませんが、これはビットマイルの例から分かる通り実際に起こり得ることです。人間は実体験でなくても過去の歴史から学ぶことが出来る生物なので、カブアンドは避けるが賢い判断と言えるでしょうね。
不穏な規約
また、筆者はこの記事の作成にあたってカブアンドの利用規約をチェックしてみたのですが、そちらに気掛かりな記述を見つけたので最後にご紹介します。カブアンドでは他社サービスと同じように禁止行為が指定されているのですが、そちらにかなり特殊な記述が見受けられるようです。
カブアンド会員利用規約(2024年11月20日制定)より引用
[前略]
第22条 (禁止事項)
- 利用者は、本サービス(生活インフラサービスを含みます。)および KABU&プ
ラスにおけるサービスの利用にあたり、以下に定める行為(それらを誘発・助長
する行為および準備行為を含みます。)を行ってはなりません。利用者の行為が
以下の各号の行為に該当するか否かは、当社の裁量により判断することができる
ものとします。
(1) 法令、公序良俗、本規約、個別規約その他当社が定める規約、ガイドライン
等に反する行為
(2) 生活インフラサービスの規約もしくは約款または生活インフラサービスの利
用に係る個別の契約条項に反する行為
(3) 他の利用者、生活インフラサービスの提供者その他第三者の権利・財産を侵
害し、またはこれらの者の迷惑となる行為(なりすまし行為を含みます。)
(4) 他の利用者が不快に感じる行為
(5) 当社または第三者を誹謗中傷し、または名誉もしくは信用を傷つける行為
(6) 当社、生活インフラサービスの提供者その他第三者のソフトウエア、ハード
ウエア、ネットワーク等の機能を破壊、妨害する行為(サーバーまたはネッ
トワークに不正にアクセスする行為を含みます。)
(7) 本サービスまたは KABU&プラスの管理および運営を妨害する行為
(8) 本サービスまたは KABU&プラスを不正に利用する行為(不正に会員登録を
する行為および 1 人の利用者が複数のカブアンド会員情報を登録するまたは
保有する行為を含みます。)
(9) 会員資格(プラス会員資格を含みます。)の売買、その他類似行為
(10)人種、民族、宗教、国籍、社会的身分、性別、病歴などの特定のカテゴリー
に関する差別的行為
(11)当社の許諾を得ずに自己または第三者の商品やサービスの広告・宣伝・誘
導を目的とする行為、またはその他スパムメール・チェーンメール等の勧
誘を目的とする行為
(12)本サービスまたは KABU&プラスにより得た情報(配信コンテンツを含みま
す。)を転載または引用および他メディアへの掲載等をする行為
(13)事実に反する情報を他の会員に流布する行為
(14)本サービスまたは KABU&プラスにおける配信コンテンツの著作権、商標権
等の知的財産権その他の権利を侵害し、または侵害するおそれのある行為
(配信コンテンツを複製、改変、公衆送信、送信可能化、アップロード、レ
ンタル、上映または放送する行為がこれに該当しますが、これに限られるも
のではありません。)
(15)配信コンテンツに施された技術的保護手段を回避する行為
(16)本サービスまたは KABU&プラスにより提供される情報を改ざん・消去する
行為
(17)当社および前澤友作が関与する公開前のプロジェクトの内容を第三者に口外
する行為
(18)その他当社が本サービスまたは KABU&プラスの管理および運営上不適切と
判断する行為- 利用者は、前項第 3 号から第 7 号および第 12 号から第 17 号に定める事項につ
いては、カブアンド会員から退会した後も、引き続きこれらを行ってはならな
いものとします。第23条 (利用停止・退会措置等)
- 当社は、利用者に次の事由のいずれかが生じた場合またはその疑いが生じた場
合、利用者に対し、事前の通知をすることなく、本サービスまたは KABU&プラ
スにおけるサービスの全部または一部の利用停止、利用者が投稿したコメント等
の削除・修正、利用者の保有する株引換券および割引券の失効、カブアンド会員
情報の削除、プラス会員資格の失効、KABU&プラスの利用停止および解約、な
らびにカブアンド会員からの強制的な退会等の措置を講じることができます。
(1) 前条(禁止事項)への違反[後略]
他社のサービスでも誹謗中傷や差別といった行為、会社の経営や信用に損害を与えることは概ね禁止されています。また、違反者への対処方法には「投稿コメントの削除・修正」も含まれ、SNS等での情報発信も対象であるかのように読み取れますが、これも他社のサービスで見受けられることのある項目なので直ちに問題とはなりません。
各インフラ系サービスのそれら規約を問題視することも出来なくはないですが、
今回の話から逸れてしまうので置いておきます。
ですが、カブアンドでは退会した後にも規約を守る義務が発生する上に、運営の独断で禁止行為の有無を判断する旨が規約上で明記されています。この前提で規約をもう一度見てみると、他社にもあるような記述でも意味が変わってしまいますね。
簡単に言ってしまえば、カブアンドを一度でも契約するとこの規約に半永久的に拘束されることになり、前澤裕作やそのお友達が「禁止行為」を判断することでSNS等の投稿が規制される可能性があります。また、規約の禁止行為には誹謗中傷・名誉棄損・運営妨害等の他に「他の利用者が迷惑や不快に感じた行為」も含まれているので、その傘に活動家や問題行動の多いインフルエンサー等を引き込んでいることも考えられますね。
前澤裕作は以前からお金配り等でよく話題に挙がる人物でしたが、それによって「個人情報と紐付けられたSNSアカウントのデータベース」を得ていると思われます。或いはその他の手段によってSNSアカウントの個人を特定していた場合、そちらのデータとカブアンドの契約者情報を参照することにより、SNSの投稿から現実の個人へ干渉することもそう難しくは無いでしょうね。
投稿削除要請は無視出来ると思っていると、
後で損害賠償請求の裁判を起こされる可能性もありますよ。
規約を挙げるだけで立証が済むからカブアンドも簡単でしょうね。
更に言えば、前澤裕作がカブアンドという会社自体を譲渡した場合、その譲渡先の団体がこの規約を悪用して言論統制を始める可能性も考えられます。分かりやすい例を挙げると、もしカブアンドを統一教会や創価学会等が手に入れてしまったら……、過去も含めた全契約者は絶望という名の深淵に叩き落されることになってしまいますよ。
このように、現状のカブアンドを契約することは、一生消えない奴隷紋を体に焼印されるに近い危険な行為と化しているので要注意です。正直言うと前澤裕作もこのようなつもりで規約を作成したわけではないと思います(そう思いたいです)が、そうだとしてもこの規約は今すぐにでも改定すべきではないでしょうか。
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